外為 | 2019年02月08日 18:33 JST

〔週間外為見通し〕リスク回避再燃の可能性に注意=MUFG・内田氏

 内田稔・三菱UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチチーフアナリスト=今週のドル円は、1ドル=109円44銭で寄り付いた。その後、前週末の1月米雇用統計やISM製造業景気指数を好感したドル買い優勢の地合いを受け継ぎ、週明けのドル円も堅調に推移した。米国時間に入り、米長期金利が3日ぶりに2.7%台乗せとなった場面で、ドル円も週間高値の110円16銭を記録した。不さえな経済指標を嫌気したユーロ安や欧州連合(EU)離脱をめぐる不透明感を警戒したポンド安なども、今週のドルを下支えしたと言えよう。  一方、110円ちょうどを記録した1月23日を除けば、110円台乗せは、昨年12月31日以来、2カ月ぶりとなる。このため、久々の110円台では戻り売り意欲も強かったようだ。ドル円は7日まで毎営業日、110円台に乗せる場面が見られたものの、いずれの場合も定着や続伸を阻まれたほか、上値も徐々に切り下がった。その上、7日にトランプ米大統領が、貿易協議の期限である3月1日以前に習近平国家主席と会談する予定がないと表明したことを受け、米国の主要な株式指数がそろって下落すると、8日の東京市場でも軟調に推移する日経平均株価を横目に、ドル円は110円台に達することができないまま、109円台後半でのもみ合いが続いている。もっとも、1週間を振り返れば、安値も6日の109円56銭にとどまっており、週間値幅はわずか60銭と前週の86銭をさらに下回る小動きに終始した。  米国の経済指標や企業の決算発表が、警戒されたほど不さえではなかったため、昨年終盤から年始にかけて高まった市場の強い緊張がここまで和らいできた。加えて、米連邦公開市場委員会(FOMC)が金融政策の正常化継続スタンスをいったん棚上げし、中立姿勢へ転じたことも緊張緩和に大きく役立ってきた。しかし、米中通商協議にて何らかの合意が形成され、制裁関税第3弾(対中輸入2000億ドル)への適用税率引き上げが回避されることへの淡い期待は後退した。実際、2月27、28日に2回目となる米朝首脳会談に臨むトランプ大統領が、3月1日までに懸案の米中通商協議においてもその解決に向けた主導的役割を演じることは容易ではなさそうだ。  その上、来週15日には、長期化した政府閉鎖の再開を目的として、暫定的に合意した米政府暫定予算案の期限も到来する。メキシコ国境における壁建設費用をめぐるトランプ大統領と下院民主党との隔たりは依然として大きいままだ。暫定予算の期限切れは、そのまま政府機関の再閉鎖へ及ぶ可能性が高い。  さらに、英国のEU離脱問題をめぐっても、アイルランドの国境問題に関しメイ英首相が現状案のままでは可決のめどが立たない英国議会と再交渉には応じない姿勢を崩していないEUとの板ばさみとなっている構図は変わっていない。いよいよ離脱期限まで50日を切った中、市場の警戒姿勢が高まるおそれもある。  このように来週は、米中通商協議や米暫定予算、英国のEU離脱問題をめぐって市場のリスク回避姿勢が高まる可能性が高そうだ。  その米中通商協議をめぐっては、来週にもムニューシン米財務長官がライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とともに訪中する予定だ。先の米中閣僚通商協議後、ホワイトハウスは1月30、31日に話し合いが行われた内容を公表しており、中でも従来見られてこなかった「米中通商関係における通貨の役割」が目を引く。約1年前の米大統領経済報告の中で、トランプ政権は経常収支に関し、「不均衡を是正する一つの重要なメカニズムは、為替相場の調整だ」と明言。足元のドル相場水準を快く思っていない可能性がある。  これらを踏まえると、米中間では人民元相場の柔軟化を進め、いくらか人民元高方向へ誘導するとの話し合いが持たれているといった思惑が市場で台頭しても不思議ではない。実際、USTRが既に公表している対日交渉項目の中でも、やはり「為替」が挙げられている。ムニューシン財務長官の訪中が、日米通商協議における米側の円安けん制カードを連想させる可能性は低くなく、ヘッドラインリスクを含め一定の注意を要そう。  過去3年間を振り返ると、年始に比べて年度末(3月末)の方が平均6円54銭もドル安・円高となってきた。かねて指摘の通り、金融規制強化を受けた年末にかけてのドル不足を主因とするドル高地合いが年明け後に一服する上、3月の決算期末を控えた本邦勢の円転需要が高まることによるものとみられる。特に、第1次所得収支(の黒字)は拡大傾向をたどっており、今年も3月にかけて円買い需要が高まりそうだ。こうした季節的な需給要因も、ドル円への下押し圧力としてじわりと効き始める可能性が高い。  徐々に英国のEU離脱期限が迫る中、米国の政府機関再閉鎖の可能性も高まってきた。米中通商協議進展への期待も後退しており、来週は、いくらかリスク回避姿勢が再燃しそうだ。季節的な円買い需要の強さも勘案すれば、ドル円相場には下押し圧力がかかりやすいだろう。指標の悪化を受けたユーロ安やEU離脱の不透明感を嫌気したポンド安などに支えられ、ドルも底堅く推移する可能性はある。  このため、来週はどちらかと言えば、ドル円よりもクロス円の円高により注意を要そう。とはいえ、ドル金利の上昇も見込みにくいことを踏まえると、ドル円の上値も重いだろう。来週のドル円のリスクは、どちらかと言えば下方向(ドル安。円高方向)とみる。 【予想レンジ】ドル円:108円00銭~111円00銭 (MUFG FX Weekly 2019/2/8より転載)(了) [時事通信社]


海外主要市場

市場 限月 現価(ドル) 前日比
NYMEX原油先物 ポイント 55.59 +0.47
NYMEX金先物 2月限 1318.1 +7.2
NYMEXプラチナ先物 4月限 806.9 +1.1
NYMEXガソリン 2月限 1.5729 -0.0034
WTI ・・・ 55.53 +0
シカゴコーン ・・・ 374.75 +0
シカゴ大豆 ・・・ 907.5 +0
シカゴコーヒー ・・・ 97.6 -0.25
CRB商品指数 ポイント 0 +0