外為 | 2019年04月12日 17:24 JST

〔週間外為見通し〕ドル円:低ボラティリティの持続性=MUFG・内田氏

 内田稔・三菱UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチチーフアナリスト=今週のドル円は111円71銭で寄り付いた。前週末の不悪な米雇用統計発表後も上値が重かったこと、英国のEU離脱期限延期を協議するEU首脳会議を週央に控えていたことから、ドル円は軟調な滑り出しとなった。その上、9日にはトランプ大統領が、EUからの輸入品110億ドル相当に対し、関税を導入する意向を表明すると貿易摩擦の再燃が連想された。IMF(国際通貨基金)も2019年の世界経済見通しを一段と下方修正したことから、リスク回避姿勢が高まった。米国の主要株価指数が揃って下落する中、ドル円も111円台を割り込んだ。翌10日も111円挟みの冴えない値動きが続き、一時は週間安値110円84銭まで下落する場面が見られた。  もっとも、英国のEU離脱期限が10月末まで延期される見通しとなると市場の緊張が緩和した。これを受け、安全資産とみなされる円やスイスフランが次第に軟調に推移。加えて、11日の米新規失業保険申請件数が、1969年12月以来の低水準となったことに反応し、ドル円は週末の東京時間にかけて堅調に推移した。一時は111円80銭台に達するなど、週間高値圏で推移している。  尚、FOMCの議事要旨(3月開催分)より、米経済が予想通り、成長した場合、年内の利上げが適切との見方を数名が示していたことが判明したが、相場への影響は限定的なものにとどまった。  今週もドル金利はやや低下傾向を辿り、ドルへの下押し材料になったとみられる。しかし、ドル指数でみると、ドルは上昇こそ阻まれているが、依然として昨年11月以来の高値圏を維持している。この背景として歴史的なボラティリティの低下が、相対的にみた高金利通貨であるドルに対して有利に作用していると考えられる。これは先週号でも指摘の通り、金利差が多少縮小しても、ボラティリティが低下すれば、キャリートレード(低金利調達+ドル運用)のリターン(為替差損益+金利差収入)がプラスとなる確率(=勝率)が高まるためだ。  最近のボラティリティ低下はVIX指数と連動して低下してきた経緯にある。この為、足もとのドル円の底堅さは、FRBのハト派姿勢への転換を受けたドル金利低下によるドル安圧力を、リスクオンの円安圧力がいくらか上回っている構図と整理できよう。  この為、為替市場のボラティリティ低下の持続性をみる上では、米国の株式相場の動向やVIX指数が重要と言える。その点、史上最高値まであとわずかに迫った米S&P500株価指数の予想株価収益率をみると、割高ではないものの、年始の割安感は既に後退している。この為、本日から本格化する決算発表に注目だ。足もとでは既に2016年第2 四半期以来となる減益が見込まれており、ネガティブサプライズは起こりにくいとの見方がある。一方、事前予想をさらに下回る減益との結果や、来期以降の見通しが冴えない場合、足もとの株高基調が水を注されかねない。株式相場が軟化すれば、その際、ドル円にも下押し圧力が加わろう。  今週は、対外証券投資も取得超となり、需給面でドル円を支えた可能性がある。例年、新年度入り直後こそ益出しなどによる売り越しがみられるが、その後は徐々に買い越しへと転じる傾向がみられるためだ。この内、ユーロ建外債投資は、為替ヘッジコストが投資家からみた受け取り超となっており、為替相場への影響が限定される為替ヘッジ付が中心とみられる。一方、ドル建外債投資の場合、為替ヘッジコストの高止まりが続いている。この為、投資家は、為替リスクをヘッジする代わりに信用リスクやデュレーションリスクを取って、原資産の利回りをヘッジコスト以上に高めるか、円売り切りのオープン外債を積み増すなど、全体の為替ヘッジ比率を引き下げる必要性が生じる。後者の場合であれば、実際の円売りを伴うことから、ドル円を支えることになる。低ボラティリティ(=リスクオン地合い)が継続する限り、来週もドル円は底堅く推移しそうだ。需給面もいくらかドル円の追い風となろう。これに予想を上回る米国の決算発表が重なれば、米長期金利もいくらか上昇すると見込まれる。その場合、直近高値(112円13銭) の上抜けも視界に入り、材料の程度次第で続伸もあり得よう。もっとも、逆に言えば、こうしたリスクオンの地合いが途絶えた場合、投機筋による円の買い戻し圧力も高まるとみられ、ドル円は反落を余儀なくされよう。特に、IMFが世界経済の見通しを引き下げたことから、年初来の「過度な悲観の修正」路線が水を注されかねない状況だ。この為、来週は、米国の小売売上高(3月分)やドイツのZEW景況感指数(4月分)、ユーロ圏製造業PMI(4月分)が重要だ。また、日本やユーロ圏の物価動向も、今後の日銀とECBの金融政策を展望する上でヒントとなるかも知れない。  このほか先週号でも報じた通り、来週4月15~16日に日米両政府がワシントンにて日米物品貿易協定(TAG)交渉の初会合を開催する。交渉項目の範囲について協議する見込みだが、「為替」を含む22項目を示す米側の強硬姿勢が垣間見えた場合、市場心理へ悪影響が及びかねず、警戒を要する。  また、17日には、日銀による半年次の金融システムレポートが公表される。金融緩和策の長期化が見込まれる中、金融システムの安定性や緩和の副作用に関する言及の有無とその程度の変化にも一応は注目か。 【来週のドル円予想レンジ】110円00銭~113円00銭 (MUFG FX Weekly 2019/4/12より転載)(了) [時事通信社]


海外主要市場

市場 限月 現価(ドル) 前日比
NYMEX原油先物 ポイント 64 +1.51
NYMEX金先物 5月限 1273.1 +4.8
NYMEXプラチナ先物 5月限 901.1 +7.9
NYMEXガソリン 4月限 2.0722 +0.0465
WTI ・・・ 63.97 +0
シカゴコーン ・・・ 358.5 -1.5
シカゴ大豆 ・・・ 880.5 -1.25
シカゴコーヒー ・・・ 90.2 +0
CRB商品指数 ポイント 0 +0